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金ノ屈卮

 

空洞が広くなっている。

寂しいとは多分、少し違う。

 

 

出かけがてら久々にポケモンGOを起動したが、すぐにやめてしまった。携帯をポケットに入れ、不意に小学校の頃を思い出す。僕から少し上の年代までは恐らくポケモン直球ど真ん中の世代で。およそ20年前、御多分に洩れず僕も周りの友人たちと初代のグリーンにどっぷりはまっていた。

 

いつだったか、シナリオをクリアしてしまって、あとは自己満足の域に入り、いよいよ飽きを覚え始めた頃だったと思う。幻のポケモン「ミュウ」を出す裏技というものを、近所に住んでいたお兄さんにやってもらったことがある。

お兄さんはなんだか道具を入れ換えたりデパートを行ったり来たりして、まるで波動拳でも出すんじゃないかってくらい、ボタンをカチャカチャ鳴らしているのをぼんやり眺めていた。甲斐虚しく、残念ながら裏技は失敗してしまって、「けつばん」という、姿かたちのない、名前すらわけのわからないポケモンを召喚してしまうことになった。

けつばん」の副作用なのか、はたまた幻のポケモンを手に入れようという傲慢さがミュウの怒りに触れたのか。その後、集めたジムのバッチが少しずつなくなるという怪奇現象に見舞われることとなった。

*1

バッチは今まで集めた順番と関係なく、ランダムに失われていった。

これの厄介なところは、一つ前のジムのバッジがないと、次のジムリーダーに戦いを挑むことができず、更にその街のジムバッジがないと街から出られなくなってしまうことだった。そして前の街のバッジをなくして、更に今いる街のバッジも無くなってしまって、とうとうどうすることもできなくなってしまった。

ゲームボーイの中の主人公は陸の孤島となった街を右往左往し、戦う相手もすることもないまま、無為に彷徨っていて、僕はそれを歯がゆく操作しているうちに、飽きも手伝ってなす術なく諦めてしまった。

 

 

もともと友人が多くなかったが、それでも振り返ってみると何人かはいた。

ここ何年かで、喧嘩や環境の違いから、少しずつ、少しずつ友人は減っていった。

まるであの時のバッジのように。

一人で新宿御苑を彷徨いながら、それをどうにか取り返したいと思うのと同様に、僕を操作しているヤツが、諦め気味に大仰に溜め息をつきながら頭の中に話しかけてくる。

「花ニ嵐ノ例ヘモアルゾ」

すれ違う人たちをぼんやり眺めながら、もう何も落とすまいと必死にポケットに手を突っ込んでいた。

*1:街ごとに一つあるジムと呼ばれるところでリーダーに戦いを挑み、勝つとバッジがもらえて、次の街へ進める通行手形のようなもの