よかれと思って大惨事

感情と思考の供養

白毛

30代でこんなことを言いたくないが、老いを感じることが増えた。残念ながら男子大学生の「俺もうおっさんだしww」というのとは違う切実性がある。物の名前は出てこないし、歯にものは詰まる。誤飲し咳込むことも増えた。忌避していたおじさんそのものである。加齢や運動不足が祟っている部分は大いにあるのだろうが、そんな状況でも気持ちは衰えを実感するのを拒否しているらしく、寝て起きたらすべてが改善されているだろうと気楽なものである。

しかしいくら拒否したところで背骨には湾曲がなく、少し躰を動かしただけで動けなくなるほど疲れる始末。先日友人と旅行した際には、夜のホテルでストレッチをしていた。『夜の』がつくと淫靡な感じになるが、youtubeで動画を流しながら、「痛いいたい!」と半絶叫で各所の筋が伸びないことを確認していた。日頃の運動不足が祟ってか、躰が硬くなった。元々なかった筋力も、めっきりなくなってしまった。2Lのペットボトルを箱で買うと、顔を真っ赤にし悲鳴をあげながらやっとのことで運ぶ有り様。12kgは肩にちっちゃいジープを乗せてないと運べないのか。

 

私が子供の頃、すでに父は白髪が多く、ひょいと気が付いたら総白髪だったからだろうか。私は白髪に抵抗がなく、むしろ常々総白髪になりたいと思ってきた(後日確認したら、私が子供の頃は父は黒髪だった)。自分に貫禄がないために、白髪に憧れているフシがある。白髪染めなどしない。白髪はすべてを解決してくれる。白髪さえあれば、私もダンディズムが漂うナイスミドルになれるはずと確信している。そう思うわりには、同年代に比べて白髪が少ないようだ。自分に白髪を見つけると小躍りするほど喜び、抜かずに大事に育てるようにしている。ちなみに「白髪を抜くと白髪が増える」、「苦労が多いと白髪が増える」。というのは迷信らしいですね。更にちなみに、先日バスに乗った際、友人は高校生に間違われていた。30を優に超えて、どれだけ貫禄がないのだ。

 

先日、鼻がむず痒くなって鏡越しに覗き込んでみると、鼻の中に一本の白毛を見つけた。鼻腔に白毛。鼻白髪。うーん。まったく違う。0点。鼻の中の白髪にダンディズムなど存在しない。ナイスミドルどころではない。初老だ。老人界の大型ルーキーか。私の希望している白い毛というのはどこに生えてもいいというものではない。黒髪で鼻毛が総白髪。考えたくない。鼻白髪は染める。これから油性マジックを買いに行く。