よかれと思って大惨事

感情と思考の供養

OP.VRと霊体のジジイ

先日、とは言っても1ヶ月以上前のこと。渋谷PARCO MUSIUM TOKYOで開催されていたジュリアン・オピー(Julian Opie)の個展『OP.VR@PARCO』に行ってきた。アートも分からんのに小生意気に。分からないなりにもそういうものを眺めるのが好きだ。何度か赤坂ミッドタウンにある21_21DESIGN SIGHTなどに行ったこともある。もちろん怯えながら。赤坂怖い。

怯えながら行ったこの個展のよさをメモ書き程度に残したいのだが、自分の中にストックがないものを語るのは難しいですね。芸術の引き出しなんてない。

そもそも個展に行こうと思ったきっかけは、広告をたまたま見かけたから。知らないのに興味をひかれた理由があるのだろうと思うのだが、今考えると恐らくそれはVRの部分だったのだろうと思う。芸術とVR。あまり食い合わせがよくないように感じませんか。だがこれはよかった。新しい可能性というか、なるほどこういうVRの使い方もあるのかと。

 

まずはジュリオピについて。調べていて気付いたのは、2000年に発売されたbulrのベストアルバムのジャケットを描いていたということだ。

Bulr:The Best Of

 

僕がこのアルバムを聴いたのは2008年頃だったと思うが、ジャケットを見たときのなんとも言えぬ感じを今でも覚えている。なるほどこの人かと思った。簡素化された線、色合い。何かに似てると思ったが、あれだ、ポップなはっぴいえんどか。

はっぴいえんど:風街ろまん

 

個展は小さな空間(15m×10mくらい)の、なにもない白い部屋だった。そこでVRゴーグルを渡された。初めの作品はひとりの人が歩いているだけ。なんだこれだけか?と思って後悔したのだが、気がつくと奥に一枚の壁があった。壁一枚を隔てて回り込む、つまり一定の動作をすると、作品が切り替わるのだ。だから誰に気を遣うでもなく、自分のペースで鑑賞できる。そしてVRだから写真に撮れないというのもよかった。作品に集中できるのだ。

有名な「群衆」や、「ダンス」(音楽あり)など動きがある動的な作品に対し、教会の鐘が鳴り響くバスティッドの街並みという静的な作品。あるいは乱立する簡素化された建物たちをすり抜け、作品の内と外から鑑賞するちょっとした冒険であり、旅行であった。VRならではの楽しみ方だったと思う。

特に気に入った作品「鳩」は、数羽の鳩が左右に規則的に移動するのだが、触ろうにも触れない鳩をずっと見ていられる。公園に出没したジジイの霊体の目線、とでも言えばいいのだろうか。公園に出没する年寄りの気持ちがよくわかった。あれはいいものだった。

 

VRと美術、意外な組み合わせは個人的にはとてもよかった。たまには芸術と洒落込むのもいい。もちろん、怯えながら。