よかれと思って大惨事

感情と思考の供養

化粧水導入液導入液

寒くなって乾燥しやすい季節になった。顔を洗えば、悪ふざけの福笑いのような見るに堪えない顔が赤くなる。ひどいときには薄皮が張り裂け、下から赤い血肉が飛び出るのではないかと思うこともある。

風呂上がりには無印良品のオールインワンジェルを使っている。化粧水、乳液、美容液が一体となっているので、ひとつひとつ塗布しなくてもいいから助かっている。いちいちボトルを持ち変えて肌にペチペチとつけるのは面倒臭い。以前友人は『人類は顔に時間をかけすぎている!』と嘆いていたが、まったくもってその通り。たいしたおフェイスでもないのに、毎日何をしているのかと自問しては憂鬱な気持ちになってしまう。

 

残りわずかになったオールインワンジェルの補充のために無印良品に行く。目当ての売場には似たようなかたちの、青やら白やらに無印らしいシンプルな表示が並ぶ。その中でひとつ気になるものがあった。透明のボトルには『化粧水導入液』と書いてあった。化粧品に詳しくないのでわからないが、そもそも化粧水自体が導入的意味合いがあるのだと思っていた。違うのか。化粧水は導入する時代か。導入するといいのか。より化粧水の効果が表れるのだろうか。だとするならば、化粧水導入液を導入するしかあるまい。そしたら少しは竹野内豊に近付けるはずだ。

 

さて、僕は動物園のポニーと同程度の知性を持ち合わせているくらいには賢い。化粧水導入液と武豊が頭の中をぐるぐると駆け回っているうちにある疑問が生じてしまった。つまり「化粧水導入液導入液はないのか」である。僕こと醜男ポニーは化粧水導入液導入液を導入すると、より高い効果を得られるのではないかと考えたのだ。この発想が化粧水のひとつの分岐点であり、化粧水の歴史の新たな1ページになるのではないだろうか。一般成人男性より遥かに少ない脳であっても、発想ひとつで歴史は積み重なっていくのである。

ここまで考えて、醜男ポニーこと納税以外に使い道のない僕は更に気付いてしまった。「化粧水導入液導入液導入液を導入すべきではないのか」である。つまり、化粧水導入液導入液導入液を導入することで、化粧水導入液導入液の効果が高まり、ひいては化粧水の効果が格段に上がるのではないだろうか。ここまで来たらもうお分かりだろう。バカはブレーキが壊れている。化粧水導入液は止まることを知らない。もう化粧水導入液を導入する人類は、化粧水にたどり着けぬほどの導入液に囲まれ、無限大に発散していく液体に人生を費やすことになるのだ。

 

いらない!化粧水導入液いらないなぁ!買ったら最後、延々と続くイントロみたいな風呂上がりになってしまう。少しだけ残っていた分別のおかげで危機を切り抜けた!

……ちなみに乳液導入液ってのはないですよね?