よかれと思って大惨事

感情と思考の供養

遠き白河の関

仕事の合間を縫って、スマホで甲子園の決勝の速報を追っていた。最近では甲子園をほとんど見ていなかったのに、100回大会ということもあって盛り上がっていることも興味をひいた。強豪ひしめく中、秋田金足農が1回戦突破したときから試合を追うようになった。

103年振りの決勝進出になった秋田勢、金足農を応援していた。しかし大阪桐蔭は決して悪役ではなく、史上初2度目春夏連覇を狙う圧倒的王者として僕の贔屓の前に立ちはだかっていた。

スマホの速報は試合の流れや動きが追えず結果しか見えない上にタイムラグがあって、次第に間怠く堪らなくなってしまった。初めてスマホワンセグを見たのだが、これも動きが止まったり仕舞いには見られなくなってしまいアプリを落とした。しかしこれは広告が入ってうんざりしてしまった。意外とスマホでテレビを見るのは手間だなと思った。

客先から帰社する車の中ではいつもはiPodを繋いで音楽を流しているのだが、ラジオで甲子園を追った。そこで感動したのが実況の表現力だ。5回には水を蒔いたり地面の凸凹をならしたりとグラウンド整備が入るのだけど、そのあとの回に「ピッチャー、ロジン(白い袋の滑り止め)を軽くにぎりました。ロジンを置いたマウンドからは土煙が上がっています。雲はなく晴れています」と実況が入った。僕の脳内には"直前に蒔いた水が乾くような暑さ、陽射しの甲子園"の情景が思い浮かんだ。あるいは"ショート正面。ファーストにヘッドスライディング。アウト。胸のKANANOの紫のロゴが見えなくなるくらい黒くなっています"でユニフォームが黒くなったことも見えるようだった。

 

そして、残念ながら負けた金足農のエース吉田投手は泣き、チームメイトだけでなく大阪桐蔭のメンバーも肩を抱いている実況がなされた。僕はもう涙目であった。金足農の佐々木主将は「吉田を日本一の投手にしたかった。中泉監督を胴上げしたかった」と試合後に語った。それは僕の涙腺に直接響いて、会社の前で堪えきれず泣いてしまった。そして佐々木主将は「大阪桐蔭は連覇というプレッシャーがある中ですごいチーム。最後に戦えてよかった」と続け、相手チームを讃えた。金足農も桐蔭も、両監督も、登場人物がみんな素晴らしく、贔屓が負けたのに恨みや落胆はなく、妙に澄んだ気持ちになった。

 

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 今回の甲子園は、映像を見ていない僕の脳裏に強く焼きついて、これから先折に触れて思い出されるんだろう。小説のような夏だった。

大阪桐蔭、優勝おめでとう。金足農、最高のチームでした。こんなに興奮したり喜んだり生きた時間は久しぶりでした。

 

 

 

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