よかれと思って大惨事

感情と思考の供養

ラーメンズ『名は体を表す』

常々ひどかったのだが、最近特にひどい。「なんの話をしていたんだっけ?」ということが増えただけでなく、悲しいくらい言葉が出てこない。

以前は二転三転した挙句、「そうか、その話をしていたんだった」と本筋に復帰できることもあったのだが、もうまったくと言っていいほど訳が分からなくなる。

あとはよくある話で名前が覚えられなくなった。「あのバンドなんだっけ?」に始まり、「取り分けるアレ取って(トング)」とか。トングなんて、名前と物があまり一致していないと思うの、僕だけですかね。

 

ラーメンズ『TOWER』より「名は体を表す」

 

僕が愛して止まないラーメンズの中でも、もう50回は見ているだろう「名は体を表す」。知っている方も、ぜひ改めて見ていただきたい。20分とは思えないほど素晴らしい出来なのだ。

 

まず小林賢太郎(眼鏡)は片桐仁(ひとつ結び)に話しかけるところから始まる。

「空ってさ、空って感じするじゃんー」

地面、壁と展開していき、賢太郎は続ける。

「意味っていうより、音のイメージが似合っているというか」

つまり、(音のイメージ=名)は体を表していると言うのだ。

 

ここからじゃがいも、お内裏様と話は続いていくが、仁はピントのずれた例えを持ち出して話をかき回し始める。

挙げ句の果てにはクリムゾンメサイアなる女盗賊、そして彼女が乗るカマンチョメンガーという愛車が出てくる。

さて、クリムゾンメサイアの容姿は想像できただろうか。また、カマンチョメンガーは赤く、タイヤがない空中に浮かぶバイクだと想像できるだろうか。できたならば、即ちこれ自体がまさに名は体を表していることになるのだ。仁はかき回しながらも、自然と本題の核心を突くことになる。

それを賢太郎は「お前の頭の中にしか存在しないものは例え話の材料にはならない」と一蹴する。

その後、車の例えで少しずつ立場が弱くなってきた賢太郎は、「ブリタニカ(百科事典)」を当てた仁に次々と名を問いかけ、仁はそれをことごとく当てていく。

クルンテープ・マハーナコーン・アモーンラッタナコーシン・マヒンタラーユッタヤー・マハーディロック・ポップ・ノッパラット・ラーチャタニーブリーロム・ウドムラーチャニウェートマハーサターン・アモーンピマーン・アワターンサティット・サッカタッティヤウィサヌカムプラシット」

バンコクの正式名称?」

 

ここから仁の独壇場となる。劇中劇、先のクリムゾンメサイア劇場が始まるのだ。

その中で、仁は賢太郎から知った名『アセットバックトセキュリティ』を筆頭に、既存の名前が新しい体を得るだけでなく、仁の作った『コルリカ』他を劇の要所に配置し、新しい名が次々に体を得ていく

観客はその新しい名の新しい体を身を持って想像することになる。

 

 

劇中劇の締め括りに仁は言う。

「バズーカって、バズーカって感じしない?」

そして最後に賢太郎は言う。

『だからそれを言ってるんじゃないー』