よかれと思って大惨事

感情と思考の供養

ミライ

朝、携帯と時計の目覚ましに起こされる。昨日深酒したことを部屋の臭いで感じる。空き缶と氷の溶けたコップが机に散乱しているのが見える。なんとなく自分も酒臭いような気がする。今日はマスクをしようと思う。

朝日というのはどこまでが朝日なのだろう。昼間は昼日でいいのだろうか。そんなことを考えながら駅までの道のり、背中の障害物群を足早に駆け抜ける。外とはうって変わって、暑い電車に乗って会社の最寄駅に着く。朝食を調達しにコンビニへ向かう。眼鏡はスーツにしまう。目が見えなくても、誰にもぶつからずに進む。会社の人にも見つかっていないことを祈る。透明人間になったかのよう。

狭い割りに混んでいないコンビニで、一直線に水を取りに行く。左に曲がってフルーツ味の小さいカロリーメイトを手に取る。それから野菜ジュースの中でも、特に健康に良さそうなパッケージのものを手に取り、宜しくと頼む。レジ前のわかめご飯のおにぎりを手に取り、ポケットに忍ばせていたパスモで会計を済ませる。この店員は昨日も見かけた。悪いが、まだポイントカードは持っていない。およそ明日もポイントカードは持っていない。それでも明日も聞かれるのだろう。

コンビニを出て、会社までの2,300mをこそこそと歩きながら思い出す。この数ヵ月、コンビニ袋の中身は昨日と同じだ。

午後、お客さんのところに行くために社用車に向かう。これから1時間も運転するのが億劫で仕方がない。思わず小さいため息をつく。車で飲む用に自販の前に立ってみると、いまいち気分のものが見当たらない。久々にコーラを手にすると、ペットボトルより外の空気の方が冷たく感じられた。

帰り道、運転しながら晩飯が面倒だなあと思う。何も食べたいものがないから、立食い蕎麦でも食べて帰ろうと思い立つ。ここ数年好んで口にするのは豆腐、白湯、蕎麦、お茶漬け、フルーツ味のカロリーメイト。味気ないとは思う。子供の頃はわからなかったものたち。

少し残ったコーラを横目になんとかの天然水を飲む。水もよく飲むようになった。大学生の頃はファンタを1日1.5Lも飲んでいたのに。週2,3本飲んでいたから、よくペットボトルがかさんでいた。いつからこんな味気ないものが好きになっていたのだろう。水の入っていたペットボトルを潰す。

舌の突起を「味蕾」と呼び、味を感知する役割を担っている。僕のみらいは、いったいどうだろう。会社に戻る道の中、ぼんやりとそんなことを考えて、数年後の自分に思いを馳せてみた。