よかれと思って大惨事

感情と思考の供養

僕がおじさんになあても

先日、fire TVでガオガイガーを懐かしんでいたんですね。ご存じです?ガオガイガー。勇者王の。僕はAmazonのプライム会員だからね、好きに見られるんだ。僕が小学生の頃のアニメで旧い作品なんだけど、そりゃあもうロボのギミックとか機械の接続音なんかがかっこよくて、やっぱりロボットは男のロマンだなと。「ガッショーン!!」「ギュガガガーン!!」みたいなの。いや、別段機械が好きとか、そんなことはまったくないんだけど、これは矛盾してるわけじゃなくて。あぁ、話が逸れた。

 

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勇者王たる堂々とした風貌。おもちゃを買ってもらった記憶が有る。君たちに最新情報を公開しよう!はお馴染みの台詞。

 

その勇者王ガオガイガーでは、主人公のガイが子供たちを助けた際に「ありがとうおじさん!」「おじさんはやめろ、俺はまだ20歳だ!」というやり取りがあるんだ。

どの媒体でもいいし、甥や姪がいる人は実体験でも、なんだっていいんだ。20代から30代そこそこの人間が子供から「ありがとうおじさん(おばさん)!」と元気よく言われて、「お、おじさん…?」と眉間をひくつかせながら自分を指した三人称に不満を漏らすという場面。一度は見たことがあると思う。

僕はこれを経験してみたいと思うんだ。ようやっとアラサーになったんだから、一度くらい『自分ではそんな年齢だと思っていないのに、年寄り呼ばわりされる』という経験をしてみたくって仕方がない。残念ながら人間関係もないし、甥や姪ができる可能性のある親戚もいないのだけれどね。だから正直実現は難しいだろう。でも呼ばれたい。どうしても。そこで博学才穎の僕は考えてみる。

子供からおじさんと呼ばれるにはどうしたらいいだろう。公園にでも行って子供と友達になる?違う。この世知辛い、かつ物騒な世の中では友達になる前に通報されて警察のご厄介になるのが関の山だ。親たちはすれ違う野郎共を異常者か子供に害なす汚物思っているに違いないからだ。

ではなんだ。足繁く幼稚園にでも通う?それはより危ない。交番で聴取を受ける際、「ハァハァ…こ、子供に、お、おじさんと呼ばれたくてハァハァ……」などと答えようものなら、クスリの使用を疑われかねない。いたずらに罪を重くすることはないだろう。

知恵者の方々はお解りのことだろう。答えは、そう、子供を助けるしかない。子供をなにか、例えば野犬や車から。悪の組織や銃弾は駄目だ。分が悪いし、その後のストーリーが始まる予感がすごいから。僕が望んでいるのは"子供におじさんと呼ばれる"までなのだから、それ以上はいらな……いや、待てよ…なんやかんや事件を解決して美女とねんごろになった挙句に大金が手に入るならいいかも…むしろそれがいいな……

まあ、とにかく助けるんだ。そして僕は言う。しかも自分が消え入るような爽やかさでもって「大丈夫かい、お嬢ちゃん」と。そこまでしたらお嬢ちゃんは言うだろう。「うん!ありがとうおじさん!」と。そういう会話が生まれる。生まれてくれ。

 

言われたら、多分僕は笑ってしまう。一応、「お、おじさん…?」と言ってみたいんだけど、あまりにもテンプレートなのにも関わらず、低い遭遇率の場面に出くわしたことがおかしくて声を出して笑ってしまうかもしれない。笑いをこらえて、眉をひくつかせながら「お、おじさん……?」も是非とも言ってみたい台詞だ。

そして僕は言われた瞬間に視点が移動して、自分の右斜め後ろの上空から自分を見下ろすようになる気がする。これはたまにある感覚で、自分が当事者であるにも関わらず、他人事に感じるような。普段の生活でも、事件や出来事がどこか遠いところで起こっているような他人事のように感じることがあるんだけど、それよりももっと、自我も他人事のように感じることがある。恐らく、1,500文字以上を費やして語った「おじさんと呼ばれたい!」というよくわからない夢が実現した途端に自分の自我が躰から抜け出して、まるで白昼夢のようなことだと思うだろう。

そしてお嬢ちゃんは魂が抜けて呆ける僕を見て「どうしたの、おじさん…?どこかいたいの?」とか聞くんだろう。ここまでされたら一晩中笑っているかもしれない。「どうしたの、おじさん……どこか痛いの?」もかなりいい台詞だ。傍観者が当事者になったとき、今まで通りの、知っている流れに身を任せるしかないのだろうと思う。

一番の問題は、早く実現させないと、本当におじさんという年齢になってしまうということだ。

アラサーは30歳±3歳だという。おじさんは一体いくつからなのだろうか。