我が家の家宝『ワスノン』
YouTubeをだらだらと流していると、ラジオだったり芸人のトークが出てくる。それを何の気なしに見ていると、この人たちはよくこんなに数々の面白いエピソードトークができるものだと感心する。僕には記憶がないので、エピソードトークが極端に下手だ。
どれくらい記憶がないとかというと、本当にまったくなにも覚えていない。頭の中に消しゴムがあるとしたら、とてつもない大きさと消す力の、消しゴム業界を震撼させるレベルのものだ。そしてそもそもペンとノートがない。消しゴムいらず。
先日、後輩に「最近マスカットとか紅茶味のお菓子が多い」と話したら、「一週間前にまったく同じことを言われました」と目を白黒させながら言われた。そう言われれば微かに言ったような気になって、自分自身も目を白黒させながらもうどうしようもないと頭を抱えるしかなかった。ひどい時には「昨日まったく同じことを言われました」という始末だ。
あるいはこんなこともあった。先日部屋の整理をしていたら、予備の洗濯洗剤がなぜか家に3つも置いてある。クリーニング屋か。心配症というか面倒臭がりなので、だいたいの日用品はストックを置くようにしているのだけど、それにしたって普通2個目のときに(ああ、もういらないな)と思っても良さそうなものなのに。なぜストック1個に余剰分1個、そこにまた1個追加するのだろうか。脳の電極棒が取れかかっている。洗濯マグちゃんを入れてるから、洗濯洗剤の消費量も減っているはずなのに、本当に病気か?認知症?ただの物忘れ?
夕食に何を食べたのか思い出せないのは「物忘れ」
食事したこと自体が思い出せないのが「認知症」
物忘れが進むと「軽度認知障害」
この手のことには事欠かなくて、この前の休日、家で「記憶を維持するガム」を噛みながら部屋の整理をしていたところ、もうどうしようもないことが起こってしまった。
先に出た「ワスノン」という薬があって、それを机の隅に置いたら、視線の先に「忘れるもんか」という埃を被ったパッケージが出てきた。なにが『忘れるもんか』だ。お前は致命的に忘れてるではないか。
我が家の家宝『忘れるもんか』
まあこれらは未開封で「お守り」みたいなものだから、服用したらきっと生き字引の歩くブリタニカになっているはずだ。
そういえば、中学が同じ友人2人と話していたときに、2人しか行っていない校外学習があった。行った記憶がない。そもそも僕は中学に行ったのか?
とはいっても、くだらない、どうでもいいことばかり覚えている。
悲しいことばかり覚えている。感情が形骸化して、それがただの情報になってしまっても、多分それは忘れてはいけないものだからかもしれない。みたいな話がしたかったのに。忘れていた。