よかれと思って大惨事

感情と思考の供養

ある同級生への献文・上

今回はひとりの同級生のために書こう。それにあたって、まずは遅くなったことを謝罪したい。これについて書けと言われたときから随分と時間が経ってしまった。君の方は遠い彼方に片付き、心傷も既になくなっているかもしれない。僕がこれを書くことで不要に記憶を刺激し、もしかしたら無意味な苦痛を感じさせることになるかもしれない。しかし今更ではあるかもしれないが、これを読むことでもし今後何かの一助となれば書き手冥利につきるというものだと思って書くので、ひとつ笑い草ついでに読んでいってほしい。

 

かつて付き合っていた人が不倫していたというよくある話だ。もう幾分前で、記憶や感情は薄れてしまったから、少々嘘も混じるかもしれない。今更こき下ろしたいわけでもない。朧げな事実を記すだけだ。それだけは先に断っておこうと思う。

 

夏目漱石のこころにあやかって、僕のかつて付き合っていた人の仮名をKとしよう。Kは地方都市の教員。僕の友人の元彼女だった。我ながら無節操だ。若さゆえの過ちだったと思いたい。平和な人間というのは面倒ごとに首を突っ込みたがるのかもしれない。

Kの身長は平均、顔のパーツは大きく、とりわけ目は大きく見開かれており、よく笑い、自立しながらも僕にはない高度な社交性があったが、どこか非常に微妙な点で作られたような胡散臭さがある人間であった。受け応えや仕草、時折見せる表情がそれだ。別に別れたから中傷するわけではない。これは正しかったからだ。無闇に働く直感が、いつも我々を傷付けるのは君もご存知のところだろう。

 

僕たちは距離が離れていながらも、新幹線で1時間ほどかけては月に何度か会い、よくやっていたはずだった。日常など簡単に壊れるし、今になってみればまったくどんなことも起こりうるのだと思う。

翌朝書類を申請したり受け取ったりするために新幹線に乗り、前夜にKの家に泊まったときだった。僕たちはよく酒を飲んだ。そしてその日もそうだった。酒を飲み、何か少し話しているうちにKはリビングで寝てしまったのだった。僕はKをベッドに誘導し、それまでお互いがやってきたのと変わらず、Kの携帯に充電器を挿した。画面を見るつもりはなかったが、光ったホーム画面にSNSのリプライが表示されていた。なんでもない言葉だったと思うが、そこは覚えていない。

 

西洋に『好奇心は猫をも殺す』ということわざがあるが、この不用意な好奇心は後に確実に僕を殺した。あろうことか、その日僕はKのSNSのアカウントを見つけてしまったのだ。のぞいていいものかと葛藤したが、夜も深かったので我慢をし見ずに寝た。翌日、眼が覚めるとKは仕事に行っていなくなっていた。僕はすぐに家を出た。こんなことから、僕は非常に不愉快な目に遭うのだが、長くなりそうなのでまた次回。