「だまし絵(トロンプ・ルイユ)」で有名なエッシャーをご存知だろうか。
先日、友人に上野の森美術館で開催されているミラクルエッシャー展に行こうと誘われた。ミラクル。よい響きだ。それだけで行きたくなる。芸術だけでなく全てに疎い私だが、エッシャーは知っている。ちなみに今後くると思っている芸人はバンビーノだ。ニーブラ。それくらい全てに疎い。
「相対性」(1953年)
私の中では、エッシャーといえばこの絵が浮かぶ。階段を上っていく人を目で追っていくと、この世界の軸がひとつではなく、絵の中にいくつも存在していることがわかる。しかも絵のどこを見てもその平面ひとつひとつの部分において納得がいくので、全体を理解しようと目線を全体に広げていくと情報が処理できなくなって余計に脳が混乱する。
「滝」(1961年)
もう一つ有名なものをあげたい。そしてこれが次の話に繋がっていく。
滝という題の絵だ。棟の水路を追っていくと、いずれ滝に行き当たる。しかし、落ちた水はまた水路へと流れていく。無限機関だ。滝の高さと水路の奥行がなぜか問題なく描かれている。計算して書かれていなければ、あるいはどこぞの頓珍漢がミラクルを起こしたという状態だ。余談だが、私は以前ふざけ半分でドラムで8ビートを叩いた際、なぜか途中から裏拍子を叩くというミラクルを起こしたことがある。私の場合、完全に頓珍漢側の出来事だ。
さて、ご存じの方もいらっしゃると思うが、Monument Valleyというアプリがある。シンプルかつ美しい配色と空気感が癖になるこのアプリは、まさにエッシャーのだまし絵的要素が多分に含まれている。操作は簡単で、レベルあげだの煩わしい待ち時間などはない。そして驚くべきことに、この記事はタダで、誰かがアプリをダウンロードしても私の懐にはまったく入らない。どういうミラクルだろうか。
さて、どこら辺がエッシャー的なのか。それはモニュメントを動かしたときに、まさしく前述の滝のような構造が浮かび上がるところにある。つたない日本語でまったくこの感動を伝えきれていないのがもどかしいところだ。ただ、エッシャーの絵同様およそ使ったことのない脳の部分が刺激されるので、ぜひ騙されたと思ってダウンロードしてみてほしい。恐らく、それで僕の言っていることが理解していただけると思う。