よかれと思って大惨事

感情と思考の供養

方方見聞録・岡山2

前回

da-shinta.hatenablog.com

 

鷲羽山から眺める瀬戸大橋の絶景を見物し終えて倉敷に戻ってきた。偶然だったんだけれど、この日は倉敷天領祭なる祭りがあるらしかった。倉敷駅から出てメインの通りがその会場で、まあ夏と祭りが大好きな僕としては、一目拝まねば宿泊予定である岡山駅周辺のホテルになぞ向かえないだろうという考えに至った。

通りに繰り出し、法被姿で踊る老若男女を眺めているとややあってから小糠雨が降ってきた。中止するほどでもないのだろうが多少雨が凌げるところでないと濡れてしまうと屋根に逃げ込み通りを見つめる。少しずつ雨が強くなっているような気がして、祭りを楽しみにしていた人たちを思うと部外者ながらなんだかいたたまれなくなってくる。せめて雨の中で踊る人たちの勇姿を見ようと目を凝らす。すると、しっとりと濡れた浴衣美女たちが眼前を通り過ぎる。刹那、なにか、こう、自分の中の新たな扉が開いていくというか、ともかく日本三景にも勝らずとも劣らない絶景が繰り広げられていたわけであります。雨よ降れ。降りしきれ。瀬戸大橋?絶景?三名園?踊り?はあ?筆舌に尽くしがたい、めくるめく眼福繰り広げられる世界。かつてこれほどの眼福があっただろうか。これですっかり岡山愛が芽生えてしまった。

岡山愛って。名前かよ。学年に一人はいそうだ。そういえば前回鳥取に行った際、鳥取大学を"鳥大"と略している人たちがいて、さすがに笑ってしまった。大きめの鳥である。「鳥大やばい」である。相当大きいのだろう。たぶん完食したら賞金がもらえる的なものだろう。ダチョウの丸焼きかなにかか。

 

翌日曜日。朝起きた時点で疲労限界近かったんだけど、 せっかくなので岡山城日本三景の後楽園へ向かう。ちなみに昨夜と打って変わってとにかく晴天。皮膚を刺殺せんばかりの日光。僕が金属なら溶けて液体にならんばかりの暑さ。

岡山城にたどり着く頃には僕の身体はグズグズに溶け、途中に脚であったものとか耳であったものとかを商店街に置き去りにしたためか僕自身が全体に小さくなっていた。正面に黒くそびえる岡山城を目の前にしても、正直どうでもいいとすら思った記憶がある。

 

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岡山城。黒いので、別名”烏城(うじょう)”というらしい。 

 

ここまで来て、あまりの暑さ、疲れにベンチにへたり込み、20分ほど動けなくなってしまった。あぁ、なんでこんなところまで来たのだろうか。どうして疲れは取れてくれないのか。強い身体が欲しい。そして曇って欲しい。と切に願った。もっと言えば、翌日からの兵庫研修もどうでもよくなるくらい疲れて、もう即刻家に帰れないのなら土に還ってもいいくらいだった。

岡山城の中は刀剣とか甲冑が納められていて、かつ他の城の解説も掲示されていてなかなか勉強になった。嘘だけど。全然覚えていない。2,3心に留まったものがあったけど。 

庭園や景勝地巡りは好きなので 、日本三名園のひとつ"後楽園"へ。石川の兼六園のような侘び寂び的要素より、その広さや見晴らしの良さからも、かなり性格の違う印象を受けた。敢えていうなら村のようだった。岡山城に隣接していることを考えると、恐らく城的役割の一端を担っているのではないだろうか。

 

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後楽園内の高台より。目算だが、東京ドーム6億個分くらいあると思われる。 

 

ぐるりと廻ったところで小雨が降り始めて、木陰で雨うつ池の鯉を眺めていると、子供たちが雨に濡れるのも気にせず鯉の餌を一心不乱に投げ始めた。鯉のバシャバシャと波立てる音と蝉の音、そして小さな雨の音が綺麗に連なってとてもよい光景だった。ビールを飲みながら、ここで疲れて動けなくなってよかったとすら思った。

 

そこから重い腰を上げ、脚を引きずり、なんとか兵庫まで行きましたとさ。

そうそう、今回はスーツでの登山はありませんでした。期待していた方、申し訳ない。特別ハプニングも起こっておりません。

平伏。